エンゼルフィッシュのいじめの原因とは?
・ペアになることと、群れの力関係が影響する
・水槽の大きさが足りなかったり、レイアウトが悪いと問題になることも
・ストレスや病気が攻撃的な行動を引き出すことも
・他の種類の魚と一緒に飼うときの注意点
縄張り意識が強すぎる場合
エンゼルフィッシュは、自分の縄張り(なわばり)をとても大切にする魚です。これは彼らの本能的な行動であり、自然界では広い空間を使って各自のテリトリーを守ります。
しかし、水槽という閉鎖された環境では、この縄張り意識が強く出すぎることがあります。特に、産卵期になると、その気持ちはもっと強くなります。彼らは自分たちの卵や稚魚を守るために、他のエンゼルフィッシュを攻撃することがあります。
水槽の中では、特定の場所を自分の縄張りにして、そこに入ってくるエンゼルフィッシュを追い出そうとします。この縄張り争いは、ただ追い払うだけでなく、時には激しい攻撃になり、ヒレを傷つけたり、体力を著しく消耗させたりすることもあります。
もし縄張りの境目がはっきりしなかったり、隠れる場所が少なかったりすると、争いはより頻繁に起こりやすくなり、弱いエンゼルフィッシュは常に脅威にさらされることになります。縄張りを持つことは彼らにとって安心感につながる行動ですが、水槽内ではそれがトラブルの元となるのです。
ペアになることと、群れの力関係が影響する
エンゼルフィッシュは、大人になるとオスとメスがペアになります。
一度ペアができると、他のエンゼルフィッシュに対してとても攻撃的になることがあります。特に卵を産む前のペアは、自分たちの縄張りに近づくエンゼルフィッシュに対して、容赦なく攻撃を仕掛けることがあります。
また、エンゼルフィッシュの群れの中では、いつも強いエンゼルフィッシュと弱いエンゼルフィッシュがいます。強いエンゼルフィッシュが弱いエンゼルフィッシュを追いかけ回したり、エサを独り占めしたりするといったいじめが見られます。
この強さの関係はいつでも変わる可能性があり、ストレスや環境の変化で攻撃性が増すこともあります。
水槽の大きさが足りなかったり、レイアウトが悪いと問題になることも
水槽が狭かったり、隠れる場所が少なかったりすると、エンゼルフィッシュはストレスを感じやすくなります。これは人間が狭い空間に閉じ込められたり、常に他人と顔を合わせたりするとストレスを感じるのと似ています。
逃げ場がないと、彼らは攻撃的な性格になりやすく、いじめにつながることがよくあります。十分に泳ぐ場所がないと、エンゼルフィッシュはいつも他のエンゼルフィッシュと顔を合わせることになり、縄張り争いが頻繁に起こります。
また、水槽の中の飾りつけが単調であったり、隠れる場所が少なかったりすると、弱いエンゼルフィッシュが身を隠す場所がなく、ずっと攻撃され続けることになります。
隠れる場所が豊富にある水槽であれば、いじめられているエンゼルフィッシュが一時的に避難してストレスを軽減できます。しかし、隠れる場所が少ないと、逃げ場のないエンゼルフィッシュはさらに追い詰められ、体力を消耗し、病気になるリスクも高まります。
水槽の広さや飾りつけは、エンゼルフィッシュの行動に非常に大きな影響を与えるため、彼らが快適に過ごせる環境を整えることが重要です。
ストレスや病気が攻撃的な行動を引き出すことも
水が汚れている、エンゼルフィッシュが多すぎる(過密飼育)、水温が合っていないなど、様々なストレスの原因もエンゼルフィッシュの攻撃性を高めます。例えば、アンモニアや亜硝酸塩が多い汚れた水は、エンゼルフィッシュの健康を損ない、免疫力を低下させ、それが攻撃的な行動につながることがあります。
人間でも体調が悪いとイライラしたり、感情的になったりするのと同じで、エンゼルフィッシュも体調が悪いと攻撃的になることがあります。
また、病気で体調を崩しているエンゼルフィッシュが、他のエンゼルフィッシュから攻撃の対象となることもあります。弱いエンゼルフィッシュは群れの中で狙われやすく、一度いじめられるとさらにストレスを受け、病気が悪化するという悪い流れになることもあります。
この悪循環は、最終的にエンゼルフィッシュの命に関わることもあるため、水質の管理や定期的な健康チェックは、いじめ対策としても非常に重要な要素となります。
他の種類の魚と一緒に飼うときの注意点
エンゼルフィッシュは比較的おとなしい魚ですが、ヒレが長い魚や小さい魚を攻撃する可能性があります。これは、彼らが本来持っている捕食本能や、特定の魚の動きや形に刺激されるためです。特にネオンテトラのような小さい魚は、エンゼルフィッシュの口に入る大きさなので、エサだと思われてしまうこともあります。
一緒に飼う場合は、エンゼルフィッシュの口に入らない大きさで、かつ泳ぐ場所が違う種類の魚を選ぶなど、相性をよく考えてあげることが大切です。例えば、底層を泳ぐコリドラスや、水槽の壁面を掃除するオトシンクルスなどは、エンゼルフィッシュとは活動層が異なるため、比較的混泳しやすいとされています。
しかし、エンゼルフィッシュと同じように縄張り意識が強い魚や、攻撃的な性格の魚(ベタなど)と一緒に飼うのは避けるべきです。混泳魚がエンゼルフィッシュを刺激したり、逆にいじめられたりする可能性があり、水槽全体の平和が乱れる原因となります。
一緒に飼うときの注意点:

エンゼルフィッシュのいじめを防ぐ7つの対策方法
・隠れ家を増やしてストレスを減らす
・相性の良い個体を見つける方法
・エサのあげ方でケンカを減らす
・攻撃する個体を一時的に別の場所に分ける
・どうしても解決しない場合の最後の手段とは
・絶対にやってはいけないこと。
・エンゼルフィッシュのいじめについて まとめ
十分な水槽サイズを確保する
いじめを防ぐには、やはり水槽の大きさが一番大切です。エンゼルフィッシュの大人になった魚がストレスなく泳ぎ回れるように、最低でも60cm以上の水槽を用意することをおすすめします。
これはあくまで最低限の大きさで、何匹か飼う場合は、90cm以上の水槽が理想的です。広い場所があれば、エンゼルフィッシュがそれぞれ自分の縄張りを持つことができ、縄張り争いが減っていじめが起こりにくくなります。
水槽が狭いと、エンゼルフィッシュはいつも他のエンゼルフィッシュの存在を感じてしまい、ストレスから攻撃的になりやすいので、適切な広さの水槽を用意することが最も重要な対策の一つです。
水槽の広さは、エンゼルフィッシュが健全な精神状態で生活できるかどうかに直結します。
隠れ家を増やしてストレスを減らす
水草、流木(りゅうぼく)、石などをうまく置いて、エンゼルフィッシュが身を隠せる場所をたくさん作りましょう。特に水槽の真ん中や底の方に、エンゼルフィッシュが通れるようなトンネルや、草が茂ったような場所を作ると効果的です。
隠れ家が多いと、弱いエンゼルフィッシュが攻撃された時にすぐに逃げ込めるので、ストレスが減ります。これは、まるで人間が安心できる場所を持つようなものです。
また、複雑な飾りつけは、視線を遮ることで、特定のエンゼルフィッシュが他のエンゼルフィッシュを追いかけ回すのを防ぐ効果も期待できます。
隠れ家は、エンゼルフィッシュが安心できる場所になるので、多めに用意するくらいの気持ちで飾りつけを工夫しましょう。
相性の良い個体を見つける方法
エンゼルフィッシュを何匹か飼う場合、お店で若いエンゼルフィッシュを何匹か(5~6匹くらい)買ってきて、自然にペアができるのを待つのが一般的です。その中で特に攻撃的でないエンゼルフィッシュや、他のエンゼルフィッシュとケンカしないエンゼルフィッシュを残すようにすると、いじめのリスクを減らせます。
また、同じお店に同じ時期に入ってきたエンゼルフィッシュは、同じ環境で育っているので、比較的相性が良い傾向があります。
異なるサイズや育ち具合が違うエンゼルフィッシュを一緒に飼うと、小さいエンゼルフィッシュが大きいエンゼルフィッシュにいじめられる可能性が高くなります。
できるだけ同じくらいの大きさのエンゼルフィッシュを選ぶことも重要です。購入前には、お店でエンゼルフィッシュの様子をよく観察し、すでにいじめ行動が見られる個体は避けるのが賢明です。
エサのあげ方でケンカを減らす
エサをあげるときは、水槽のいろいろな場所に少しずつ撒くようにしましょう。一箇所にまとめてあげると、強いエンゼルフィッシュが独り占めしてしまい、弱いエンゼルフィッシュが十分にエサを食べられなくなることがあります。
エサが全体に行き渡ることで、エサを巡るケンカを減らせます。また、エサの量も大切です。少なすぎると奪い合いになり、多すぎると水が汚れる原因になります。
エンゼルフィッシュが数分で食べきれる量を、一日に何回かに分けてあげるのが理想的です。沈むタイプのエサと浮くタイプのエサを組み合わせることで、すべてのエンゼルフィッシュが平等にエサを食べられるように工夫することも有効です。
エサの時間がストレスの原因にならないよう、細やかな配慮が必要です。
攻撃する個体を一時的に別の場所に分ける
いじめがひどく、特定のエンゼルフィッシュがしつこく他のエンゼルフィッシュを攻撃する場合は、攻撃するエンゼルフィッシュを一時的に別の水槽や、水槽の中に置ける隔離ケースに移しましょう。
数日間分けておくことで、攻撃的な気持ちが落ち着くことがあります。この隔離している間に、水槽の飾りつけを変えたり、新しい隠れ家を追加したりするのも良いでしょう。隔離されていたエンゼルフィッシュは、元の水槽に戻されたときに、前のような強い縄張り意識を持たなくなることがあります。
ただし、隔離する期間が長すぎると、再び水槽に戻したときに新しい縄張り争いが始まる可能性もあるので、状況を見て判断しましょう。一時的な隔離は、いじめられているエンゼルフィッシュの命を守るための重要な手段です。
エンゼルフィッシュが3匹
いじめっ子のA
傍観者のB
いじめられっ子のC暴力が目に余るのでAを隔離
しばらくしたら今度は、CがBをいじめだしたのを見て、魚の世界も楽じゃないなって思った pic.twitter.com/g8HxO27aL4— ひだりキキ (@vZJ302VaJ32ygsj) April 25, 2021
どうしても解決しない場合の最後の手段とは
これまでの対策を試してもいじめが解決しない場合は、以下の選択肢も考える必要があります。これらの方法は、エンゼルフィッシュの福祉を最優先に考えた上での最終手段となります。
これらの方法は、最後の手段として慎重に考えるべきです。エンゼルフィッシュの幸せを一番に考えて、一番良い方法を選びましょう。
絶対にやってはいけないこと。
エンゼルフィッシュのいじめが起きている時、感情的になっていじめられているエンゼルフィッシュを無理に触ったり、頻繁に水槽の飾りつけを変えたりするのは避けましょう。 こうした行動は、エンゼルフィッシュにさらに大きなストレスを与え、状況を悪化させる可能性があります。特に、水槽に手を差し入れる行為は、エンゼルフィッシュにとって非常に大きなストレスとなり、攻撃的な行動をさらにひどくする可能性があります。エンゼルフィッシュは突然の環境変化や外部からの刺激に敏感で、驚きや恐怖を感じ、それがより一層のストレスにつながります。
また、安易に強い薬を使うことも、他のエンゼルフィッシュに悪い影響を与える可能性があるため、水質を改善したり、環境を整えたりする方法以外で問題を解決しようとする場合は、必ず詳しい人に相談することが大切です。 適切な診断なしに薬を使用すると、かえって水槽全体の生態系を乱し、他の健康なエンゼルフィッシュにまで悪影響を及ぼす可能性があります。
そして、絶対にやってはいけないこととして、いじめられているエンゼルフィッシュを自然の川や池に放すことは厳禁です。 飼育していた熱帯魚を自然界に放すことは、その地域の生態系を壊してしまう可能性があります。エンゼルフィッシュは日本の自然環境にはいない外来種であり、日本の在来種に病気を移したり、食べ物や住む場所を奪ったりする危険性があります。
また、日本の気候はエンゼルフィッシュにとって厳しく、ほとんどの場合、長く生きることはできません。いじめの問題が解決しない場合でも、必ず責任を持って飼育し続けるか、信頼できる里親を探す、または専門のペットショップやアクアリウムショップに相談するようにしましょう。焦らず、冷静に状況を判断し、適切な対応を心がけることが、エンゼルフィッシュと自然環境の両方にとって重要です。
エンゼルフィッシュのいじめについて まとめ
エンゼルフィッシュのいじめ問題は、エンゼルフィッシュの性質や飼育している環境が原因であることがほとんどです。縄張りを大切にする気持ち、ペアになること、水槽の大きさ、飾りつけ、ストレスなど、様々な理由が複雑に絡み合っています。
これらの原因を理解し、適切な水槽の環境を整えたり、隠れ家を作ったり、エサのあげ方を工夫したり、必要に応じていじめをするエンゼルフィッシュを一時的に分けたりするなど、いろいろな対策をすることで、エンゼルフィッシュが安心して暮らせる場所を作ることができます。
エンゼルフィッシュが気持ちよく泳ぎ、その美しい姿を思う存分楽しめるように、毎日よく観察して、適切な世話を心がけましょう。もし、この記事を読んでも解決できない問題に直面した場合は、経験豊富なアクアリウムの専門家やお店の人に相談することも良い方法です。
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