「タランチュラって、なつくの?」
「SNSで手に乗せている人を見たけど、本当に懐くのかな?」
「ペットにしてみたいけど、怖がられたり噛まれたりしないか心配…」

そんな疑問や不安を抱えている方に向けて、この記事では「タランチュラってなつくのか?」というテーマについて、科学的な視点と実際の飼育経験に基づいて解説していきます。
結論から言えば、タランチュラは犬や猫のようになつく動物ではありません。しかし、適切な環境と接し方を守れば、人に慣れたり攻撃性が低くなる個体も存在します。
✔ タランチュラはなつかない
✔ 人に慣れる可能性がある種類とその特徴
✔ 飼育する上での注意点や距離感の取り方
✔ ハンドリングの可否とその方法
タランチュラはなつく? 基本情報
タランチュラってどんな蜘蛛?
タランチュラは、その多くが南米やアフリカ、アジアの熱帯・亜熱帯地域に生息する大型のクモです。毛むくじゃらの体が特徴的で、ペットとしても世界中で人気があります。
彼らは主に地中に巣穴を掘ったり、木の洞に潜んだりして生活し、通りかかった昆虫や小型の爬虫類、時には鳥やげっ歯類などを捕食します。網を張って獲物を捕らえるのではなく、待ち伏せして襲いかかる待ち伏せ型の捕食者です。その種類は非常に多く、色やサイズ、性質も様々です。
タランチュラの寿命
タランチュラの寿命は種類や性別によって大きく異なりますが、一般的にメスの方がオスよりもはるかに長生きします。メスは種類によっては20年以上生きることも珍しくありませんが、オスは成熟すると数年で寿命を迎えることが多いです。
この寿命の長さが、長期的なペットとしてタランチュラを飼育する上での魅力の一つにもなっています。
タランチュラの飼育
タランチュラは比較的丈夫な生き物で、適切な環境を整えれば飼育はそれほど難しくありません。飼育には、種類に合わせたサイズのプラケースやガラスケースを用意します。
ケース内には、彼らが落ち着けるようにシェルター(隠れ家)を設置し、床材にはココハスクやミズゴケなど、湿度を保てるものを使用します。種類によって適正な温度や湿度が異なるため、それぞれのタランチュラの好みに合わせた環境を再現することが重要です。脱走防止のため、蓋はしっかりと固定する必要があります。
タランチュラの餌
タランチュラの餌は主に生きた昆虫です。最も一般的なのは、コオロギやデュビア(アルゼンチンモリゴキブリ)です。タランチュラのサイズに合わせて、適切な大きさの餌を選びます。
与える頻度は、若い個体は週に1~2回、成体は2週間に1回程度が目安です。餌を与えすぎると肥満の原因になるため、注意が必要です。餌を捕食する様子は迫力があり、飼育の大きな醍醐味の一つです。
タランチュラのにおい
タランチュラ自体はほとんどにおいがありません。もし飼育ケースから不快なにおいがする場合、それは食べ残しの餌が腐敗しているか、排泄物が溜まっているためであることがほとんどです。
清潔な飼育環境を維持することで、においの問題は発生しないでしょう。ケース内の衛生状態はタランチュラの健康にも直結するため、定期的な清掃が不可欠です。
タランチュラはなつく?
タランチュラが人間のように「なつく」という言葉の解釈は、人それぞれ異なるかもしれません。犬や猫のように積極的にコミュニケーションをとってきたり、感情表現をしたりすることはありません。しかし、定期的に餌を与える飼い主に対して、特定の行動を示すことはあります。
タランチュラの「なつき」については、後ほど詳しく掘り下げていきますが、彼らが飼い主の存在に慣れ、警戒心を薄めることは十分に考えられます。
タランチュラはなつくって本当?
タランチュラはなつかない
結論から言うと、タランチュラは犬や猫のように、飼い主を好きになって愛情を示したり、特定の人間を特別視したりすることはありません。
タランチュラは、感情を持ったり、仲間と協力したりする動物とは違って、脳のつくりがシンプルです。そのため、特定の人に対して深い絆を感じたり、愛情表現をしたりする能力は持っていないと考えられています。
タランチュラの行動は、ほとんどが生きるために必要な本能に基づいています。例えば、餌を見つける、身を守る、子孫を残すといった、生きていく上で欠かせない欲求が、その行動のほとんどを占めているのです。そのため、飼い主との関わり方も、あくまで「自分の生存に有利な存在かどうか」という視点で見ていると理解するのが適切でしょう。
触っていると慣れてくることはある
しかし、「なつく」とは少し違いますが、飼い主が触ったり世話をしたりするうちに、タランチュラが飼育環境や飼い主の存在に慣れてくることはあります。
継続的に触れ合ったり、優しく世話をしたりすることで、タランチュラは人間を危険な存在ではないと認識するようになります。
すると、以前のようにパニックになったり、威嚇したりすることが減る場合があります。
これは「馴化(じゅんか)」という現象で、同じ刺激を繰り返し受けるうちに、その刺激に対する反応が弱まることです。たとえば、初めての音に驚く赤ちゃんが、何度も同じ音を聞くうちに平気になるようなものです。
タランチュラにとって、飼い主は怖くない、安全な存在だと学ぶわけです。この「慣れ」が、飼い主にとっては「なついている」と感じられるかもしれません。
一匹ずつ性格や反応が違う
驚くかもしれませんが、タランチュラも一匹ずつ性格や行動が大きく違います。
あるタランチュラはとても臆病で、少しの揺れでもすぐに隠れてしまうかもしれません。一方で、比較的おっとりしていて、周りの変化にもあまり動じないタランチュラもいます。
これは、人間と同じように、そのタランチュラが元々持っている遺伝的な特徴や、子どもの頃の経験、育った環境などが影響していると考えられます。例えば、幼い頃に頻繁に刺激を受けたタランチュラは、より警戒心が強くなる傾向があるかもしれません。
「なついている」と勘違いしやすい行動
タランチュラが「なついている」と誤解されやすい行動には、いくつかパターンがあります。
飼い主の手に乗せたときにじっとしていると、「慣れてくれた」と感じるかもしれませんが、これはただ動きを止めて固まっているだけかもしれません。
あるいは、身動きが取れないので、威嚇する行動に出られないだけの場合もあります。野生の動物が天敵に遭遇した際に「フリーズ」するのと同じような状態かもしれませんね。
餌の匂いを察知して隠れ家から出てくるのは、純粋に「食べたい」という本能的な行動であって、飼い主への愛情ではありません。
また、飼い主がいても逃げたり威嚇したりしないのは、先に説明した「馴化」が進んで、飼い主の存在が怖くないと学んだ結果なのです。
これらの行動は、タランチュラが飼い主を「脅威ではない」と認識している証拠ではありますが、「好き」という感情に基づいているわけではないことを理解しておく必要があります。
飼い主を認識している可能性はあるの?
タランチュラが飼い主の顔を覚えたり、名前を覚えたりする可能性は、ほとんどありません。
タランチュラは主に、振動、匂い、そして視覚(あまり目は良くありません)を使って周りの世界を認識します。
そのため、飼い主の声や手の動き、体から出る匂いなどから「この存在は危険ではない」と学ぶことはあっても、それを「特定の人物」として認識しているわけではないでしょう。
タランチュラはあくまで、自分の縄張りに現れる「特定の刺激源」として飼い主を認識していると考えるのが自然です。
これは、特定の木の枝が安全だと覚えるのと同じような感覚に近いかもしれません。

タランチュラはなつく?関係を築くためのポイント
タランチュラが人になつくことはないとわかった上で、タランチュラと上手に付き合い、ストレスなく一緒に暮らすための飼い方のポイントをご紹介します。
大切なのは、タランチュラの習性を理解し、安全で居心地の良い環境を作ってあげることです。そうすることで、飼い主もタランチュラも、互いに快適な共生関係を築けるでしょう。
静かでストレスの少ない飼育環境を整える
タランチュラは非常にデリケートな生き物で、外からの刺激に敏感です。
だから、静かでストレスの少ない飼育環境を整えることが一番重要です。
具体的には、次の点に気をつけましょう。まず、振動の多い場所、例えばドアの開け閉めが多い部屋や、スピーカーの近くなどは避けるべきです。タランチュラは足の感覚器で振動を敏感に察知するため、絶え間ない振動は大きなストレスとなります。
次に、直射日光が当たる場所や、急に温度が変わる場所も、タランチュラには強いストレスになります。温度と湿度は、タランチュラの健康に直結する重要な要素です。種類に合った適切な温度と湿度を保ち、急な変化がないように管理することが大切です。
また、シェルターや隠れ家を必ず用意して、タランチュラが安心できる場所を作ってあげることも忘れてはなりません。これは、タランチュラが身を守り、落ち着くための必須アイテムです。
無理に触らず、タランチュラのペースを尊重する
「触れ合って慣れてほしい」という気持ちはよくわかりますが、無理に触ろうとせず、タランチュラのペースを大切にすることが非常に重要です。
特に、家に連れてきたばかりのタランチュラは、新しい環境に戸惑い、強いストレスを感じています。この時期に無理なハンドリングを行うと、威嚇行動を取ったり、ストレスで体調を崩したりする原因になります。
まずは、タランチュラが落ち着いてケージの中の環境に慣れることを優先しましょう。飼い主がよく観察して、そのタランチュラの性格や気分を読み取れるようになることが、良い関係を築くための第一歩です。
タランチュラが隠れ家にこもっている時は、そっと見守ってあげてください。焦りは禁物です。
定期的に餌をあげて安心感を与える
タランチュラとの関係を築く上で、決まった時間に餌をあげることはとても大切です。
決まった時間に餌をもらえることで、タランチュラは飼い主の存在を「餌をくれる安全な存在」と認識するようになります。
これは「信頼」というよりは「良いことが起こる存在」として認識する、ということですが、これにより飼い主に対する警戒心が和らぐ傾向があります。
餌をあげる際は、タランチュラを驚かせないよう、ゆっくりと慎重に行いましょう。ピンセットなどで餌をそっと置くのがおすすめです。
ハンドリングは種類や性格をよく見てから
タランチュラを手に乗せるハンドリングは、飼育の楽しみの一つですが、タランチュラの種類や性格をよく見極めてから、とても慎重に行う必要があります。
どんなタランチュラでもハンドリングに向いているわけではありません。特に、攻撃性が高い種類(例:アースタイガー系など)や、神経質なタランチュラはハンドリング自体が強いストレスになることが多く、噛みつかれたり、刺激毛を飛ばされたりする危険もあります。
ハンドリングを行う場合は、次のことを必ず守りましょう。まず、安全のため、落ちる危険がある高い場所でのハンドリングは避けてください。
次に、タランチュラが興奮していないか、威嚇する体勢になっていないかをよく確認し、落ち着いている時に行いましょう。急な動きは避け、ゆっくりと手を差し出すことが大切です。タランチュラの動きをよく観察し、無理強いは絶対にしないでください。
長く手に乗せすぎるとタランチュラの負担になるので、短い時間で終えるようにします。
また、タランチュラの咬傷や、刺激毛を飛ばされて皮膚炎や目の炎症を起こす危険があることを十分に理解しておきましょう。手袋を着用するなど、自己防衛策も検討してください。
脱皮中は触らずに見守るのが基本
タランチュラにとって、脱皮は命がけの大仕事です。
この時期は非常にデリケートになっていて、わずかな刺激でもストレスとなり、脱皮がうまくいかなくなる原因になることがあります。
脱皮のサインが見られたら(食欲がなくなる、動きが鈍くなる、体が黒っぽくなる、仰向けでじっとしているなど)、完全に脱皮を終え、新しい体がしっかり固まるまで絶対に触らずに見守るのが基本です。
脱皮したばかりのタランチュラの体はとても柔らかく、うっかり触ると命に関わるダメージを与えてしまう可能性があります。
脱皮殻は、タランチュラの体が完全に固まったことを確認してから取り除きましょう。この期間は、飼育環境の湿度を適切に保つことも非常に重要です。
脱皮不全を防ぐためにも、静かで安定した環境を提供してください。
初めてでも飼いやすい種類の選び方
タランチュラ飼育が初めてで、「慣れてほしい」という気持ちがあるなら、比較的おとなしくて、環境の変化に強いとされる種類を選ぶのがおすすめです。
これらの種類は、一般的に神経質な個体が少なく、飼育管理もしやすい傾向にあります。
これらの種類でも一匹ずつ性格は違いますが、一般的に他の種類に比べてストレスに強く、飼いやすい傾向にあります。初めてのタランチュラ飼育では、これらの種類から選んでみるのも良いでしょう。
タランチュラはなつくのか? まとめ
タランチュラは犬や猫のように「なつく」ことはありません。
タランチュラは本能に基づいて行動する生き物で、感情的な絆を深める能力は持っていません。しかし、続けて世話をしたり、優しく触れ合ったりすることで、飼い主の存在を「危険ではないもの」として学び、慣れてくることはあります。
これは、タランチュラがストレスを感じにくくなるために重要なことです。
タランチュラと良い関係を築くためには、タランチュラの生態を深く理解し、静かでストレスの少ない飼育環境を作ることが一番大切です。無理なハンドリングは避け、タランチュラのペースを尊重し、決まった時間に餌をあげることで安心感を与えることが、ストレスなくタランチュラが過ごせる秘訣です。
タランチュラは、その神秘的な魅力と、繊細な習性を持つとても面白いペットです。「なつく」という期待とは違うかもしれませんが、タランチュラのユニークな行動や成長を見守ることは、飼い主にとって大きな喜びとなるでしょう。
彼らの生態を理解し、適切な知識と愛情を持って接することで、飼い主とタランチュラの間に、独特で穏やかな「共生関係」が生まれるはずです。この関係は、ペットと飼い主というよりは、互いの存在を尊重し合う、より自然に近い関係性と言えるかもしれません。
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